AIを活用し、営農現場の水不足対策を促進する

地球の温暖化が止まらない。昨今、気候変動の影響、資材の高騰などを受けて、農業生産者は大変厳しい状況に置かれている。特に、世界各地で発生している干ばつは農作物の栽培にとって大きな打撃である。持続可能な農業を実現していくうえで、水不足に対する方策は、喫緊の課題となっている。

従来、少量多頻度灌漑は最適な土壌水分量を保ち、消費する水の量を削減する栽培手法として一般的に知られていた。同手法はしかし、刻々と変化する最適な水分量を判断するのが困難であり、広大かつ複数の圃場をもつ生産者にとっては、複雑な管理と作業負荷の増大につながることから、普及が進んでいないという。

カゴメNECが今年9月ポルトガルに設立した――AIを活用して加工用トマトの営農支援を行う合弁会社DXASは、NECの農業ICTプラットフォーム「CropScope」に少量多頻度灌漑に対応したAI営農アドバイスと、自動灌漑制御機能を加えたサービスの提案を11月に開始する。新サービスについて、2023年4月からの展開を目指す。

「CropScope」で提供している水や肥料のAI営農アドバイスを用いた少量多頻度灌漑の実証試験を、カゴメとNECが今年4月よりポルトガルで実施した。その結果、同プラットフォームを活用していない圃場に比べて、約15%少ない灌漑量で、収穫量が約20%増えた。通常よりも少ない水の量で収穫量を増やすことに成功した。

今回の実証試験で得られた成果を踏まえ、少量多頻度に対応したAI営農アドバイスと、作業負荷の軽減につながる自動灌漑制御機能を加えたサービスを、今後DXASが、主に欧州、米州、オーストラリアの加工用トマト市場に普及させていくことで、さらなる営農支援を加速していく。これにより、営農現場の水不足問題に対応することで、より環境に優しく収益性の高い営農を促進し、世界各国での持続可能な農業に貢献するという。