内燃機関をシミュレーション、ピストンピン摩耗・焼付き原因を特定

自動二輪・四輪車、船舶、プロペラ機、発電機などはレシプロエンジンが動力源だ。それは燃焼シリンダー内部をピストンが往復運動し、それを回転運動に変換することで駆動を行うものだ。燃焼による大動力を駆動系に効率よく伝達することが重要だが――

過酷な稼働条件下では部品に高耐久性が求められる。レシプロエンジンの最多故障原因は部品の摩耗・焼付きであり、潤滑油の膜が途切れて金属部品が接触し、傷が付いたり固着する現象は、動力機械全体の性能を左右する。焼付きが生じると、多くの場合エンジンの始動が不可能になり、エンジン自体の交換を要するなど大きな被害となる可能性が高い。

ピストンピン-コンロッド(連接棒)間は、内燃機関にて最も厳しい条件下での流体潤滑が要求される。だが従来、流体潤滑における摩耗・焼付き発生部位の検証には理論や計算による予測は不可能だと考えられていて、長期間にわたる負荷試験を行わざるをえなかった。そこで、ピストンピン-コンロッド小端間の相変化を伴う狭あい潤滑油液膜流れに着目したという。

東北大学流体科学研究所石本淳教授)とHONDAの研究グループは、超並列スパコンによる、ピストンピン摺動(しょうどう)部における摩耗・焼付き発生部位に関するシミュレーション予測に世界で初めて成功。構造体の弾性変形と流路変化を考慮した混相流体-構造体連成解析手法を新たに開発し、厳しい負荷条件下におけるトライボロジー特性に関するシミュレーション予測法を完成した。

その結果、ピストンピンの弓なり状の変形が、コンロッドエッジにおける機械接触・焼付きの原因であることを特定した。同手法は流体潤滑を用いた全ての摺動部品要素に適用可能であり、試験時間や製造コストの削減、輸送機械・産業機械の損傷予測や構成要素の安全性指針策定に貢献するという。グループの研究成果はASME Journal of Tribologyに掲載された。