エッジでAI、電子機器のリアルタイム故障予知が超低電力で可能に

人工知能(AI)の活用が様々な分野で期待されている。近年、多彩な現場でデジタル転換を図るIoT、クラウドとの相乗効果も望めるエッジコンピューティングが、AIの技術進化に伴い一層注目され始めている。

一般的にAIチップでは「学習」と「推論」を行う。「学習」は、膨大なデータを取り込み構造化し、随時更新する必要がある。そこでAIチップは、高い演算能力が求められ、消費電力も大きくなる。ゆえにクラウド向けの高性能で高価なAIチップが次々と開発される。一方、より効率的なIoT社会構築のカギとなるエッジ向けの、省電力で現場学習できるAIチップの開発はこれまで困難だったという。

ロームは、IoT分野のエッジコンピュータ/エンドポイントに向けて、モーターやセンサなどを搭載する電子機器の故障予知(予兆検知)を超低消費電力かつリアルタイムで実現できるオンデバイス学習AIチップを開発した。同チップ(デモ動画:YouTube)は、慶應義塾大学松谷教授が開発した「オンデバイス学習アルゴリズム」をベースに、同社のAIアクセラレータと、高効率8-bit CPU「Matisse」を中心に構成される。

2万ゲートの超小型AIアクセラレータと、高効率CPUとの組み合わせにより、わずか数10mW(学習可能な従来AIチップ比で1/1000)の超低消費電力で学習・推論が可能。クラウド連携なしに、機器の設置現場で未知の入力データに対して「いつもと違う」を数値化して出力――幅広い用途でリアルタイムの故障予知を達成できるという。

同社は、新開発AIチップのAIアクセラレータを、モーターやセンサの故障予知のためにIC製品へ搭載する考えで、2023年度に製品化着手、24年度に量産予定としている。AIチップは今年10月に、「イノベーション・ジャパン2022」「CEATEC 2022」にて松谷教授の研究成果としても紹介されるとのことだ。