GHG削減・エネ資源創出等に向けて、藻類を中性子線照射で育てる

「人間の影響が大気、海洋および陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」。人間は温室効果ガス(GHG)の削減が急務である。一方、藻類は、光合成によって水中に溶け込んだCO2を吸収・固定しながら有機物を生成し、増殖する。

IPCC・AR6が公表された(環境省)なか、藻類細胞そのものや藻類によって作られる有機物はエネルギー・食料資源としても活用でき、有用な形質をもつ藻類育種は、気候変動に係る様々な課題を解決する手段として注目されている。そこで、γ線やX線などの電磁波や電荷を持つ重粒子線を用いて、藻類の遺伝子変異を促す。従来の育種方法では......

高エネルギーの電磁波や重粒子線を照射することにより遺伝子配列に何らかの変異を誘発し、変異を持つ細胞集団の中から所望の形質の細胞を選抜する。電磁波や重粒子線は物質中の透過性が低く、培養液中で生育する藻類に照射しようとしても、液表面の一部の細胞にのみに照射され、液中の他の多くの細胞には効果が及ばない点が課題だったという。

NTTユーグレナは13日、透過性が極めて高く、培養が必要な生物にも不規則かつ効果的にエネルギーを加えられる中性子線(一方向に動いている中性子)を活用し、GHG削減やエネ資源創出など気候変動に係る課題解決を目的とする藻類育種技術――藻類が有するCO2吸収・固定能力やバイオ燃料の原料となる油脂生産能力などの有用な形質を中性子線照射による遺伝子変異導入によって高める技術の実証実験を開始した。

高有用性藻類を育種・生産できれば、食料資源や農林水産飼料の創出といった課題解決も期待されるという。両社は、様々な目的に適した有用株を効果的に選抜する手法についても検討する。今回の技術は将来的に、藻類にかかわらず、気候変動課題の解決に有用な微生物などを対象とすることも含め、その能力を最大限に引き出せる汎用性の高い育種技術へと発展させていく考えだ。