ウクライナ侵攻の事前予測は1割未満、いま必要なリスク対策は――

2014年にクリミア半島がロシアの領土とされた。ウクライナはもちろん国連、民主主義国らはその併合を認めていない。そして8年後、今年2月24日にロシアによるウクライナへの侵攻が始まった。それをリスクとして織り込んでいた大手企業は10%未満だったという。

NRIは最近の世界情勢を踏まえ、日本企業のリスク認識・対応上の変化の兆しを見出すため、6月6日~22日、東証プライム市場の企業を対象に「グローバル・リスクと日本企業の対応に関するアンケート調査」を実施。105社から回答を得たとして今月18日にその集計結果を公表した。

ウクライナ侵攻をその開始以前から「すでに事業計画に織り込んでおり、対応を進めていた」は3.8%、「織り込んでいたが、対応は準備していなかった」は5.7%に留まり、自社のリスクとして侵攻を「織り込んでいなかった」企業が約7割――。近ごろ話題になることが多い地政学的リスクだが、ウクライナ侵攻について、日本企業の多くは現実味を帯びたリスクとは認識していなかったことがうかがえる。

アンケート時期がTCFD提言やウクライナ侵攻等の後だったため、環境リスクについて、「とても重要」「ある程度重要」とし、地政学リスクについて「とても重要」「ある程度重要」と回答(いずれも4割超5割未満)。東証プライム上場企業がこれらのリスクに注意を払っていることがわかる。回答企業が内部リスクを重視していることを反映して、重要と考えるリスク対策のトップ5は、同率(76.2%)最上位の――

「事業継続計画(BCP)の立案」と「セキュリティ強化・予防」に続き、「事業リスク分析・評価」、「危機管理体制強化」、「取引先の状況把握」となった。これらは従来からの延長線上にある対策で、環境・地政学リスク認識の重要性が高まる今、「シナリオプランニング」や「チーフリスクオフィサー(CRO)設置」等の検討も必要だという。