富士山全域を"ローカル5G"でDX、安全安心な観光登山へ

宝永4年(1707年)に大噴火した。日本最高峰はそれまでにも噴火を繰り返していて、今日の姿はその名残でありかつまた変わるかもしれない。登山道も火口出現が想定される。ゆえに火口の位置に応じた最適な避難ルートをエリアごとの登山者に迅速かつ的確に伝える必要がある。

令和3年版「富士山ハザードマップ」により噴火に伴う新たな被害想定が明らかとなり、観光客や地域住民への情報伝達を含む避難対策の構築が急務となっている。一方、富士山における電力・通信インフラは脆弱であり、国内外の観光登山者によるトラブルが多発するのに、基本的な遭難者対応から落石による大事故に至るまで、電話に頼っているという。

山梨県山梨県富士山科学研究所東京大学NECネッツエスアイIIJヤマレコ、およびCCC21L(コンソーシアム代表機関)は、総務省の令和3年度「課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」に採択された「富士山地域DX『安全・安心観光情報システム』の実現」において、ローカル5Gの有効性を検証した。結果、「電波伝搬モデルの精緻化」「準同期TDDの追加パターンの開発」に加え――

「危険状況・災害予兆可視化のための遠隔監視システムの構築」「迅速かつ円滑なローカルコミュニケーションシステム」「ローカル5Gエッジコンピューティングによる大容量データの低遅延共有」の有効性を確認。ローカル5Gの活用は、正確な状況把握に基づく登山者への適確な危険周知等、安全・安心な観光登山に寄与することを実証した。

今回の実証成果の社会実装(恒久設置)に向けてはしかし、さらなる検討が必要であるとの結論に至った。7者のコンソーシアムは令和4年度以降に、インフラ整備、予算確保、運用体制の構築を進めながら、令和8年度までに恒久設置の具体的な計画を検討する。併せて、「安全・安心観光情報システム」の全国火山地域への成果展開を図っていくとした。