ミリ波センサーとAI技術により低リスクかつ詳細な行動分析が可能に

病院や介護施設では近年、センサー利用による見守りが注目されている。患者や高齢者の安全をまもり、看護師や介護士の業務負担を減らすために――。特に一般的なミリ波センサーを用いた見守り技術は、プライバシーの侵害リスクが低く、安く導入できるとして大いに期待されている。

現在普及しているミリ波センサーは安価だが、粒度の粗い点群データしか得られない。患者や高齢者の転倒を高精度に検知できず、転倒前後の行動の詳細な分析も困難だという。富士通は、79GHz帯の一般的なミリ波センサーを用いて人の詳細な行動分析を実現する新技術を開発した(同周波数帯は電波法に準拠)。同技術では、ふつうのミリ波センサーで取得される粒度の粗い点群データから、人の姿勢を高精度に推定できる。

「姿勢推定に適した入力データを生成する点群データ拡張技術」と「姿勢推定を高度化する大規模データセットと姿勢推定AIモデル」の組合わせにより、転倒などの確実な検知とプライバシーの配慮の両立を実現している。同技術の前身では、鳥取市富士通Japanとともに市営住宅でプライバシーに配慮しつつ高齢者を見守る実証実験を行い、その有効性を確認した(22年2月同市発表)。

新技術は、人の複雑な行動を認識する独自AI技術「Actlyzer」との連携により、病院や介護施設などのプライバシー性の高い空間でもカメラを設置せずに転倒前後の行動を詳細に分析できるという。富士通は先月、川崎市とともに、福祉製品やサービスの開発・改良を支援する施設「ウェルテック」内の模擬環境ラボにて、起床をはじめとする様々な動作時の機器の反応や通知内容などを検証。

その結果を踏まえて8月以降に実際の高齢者施設にて実証実験を予定しているという。同社は上記新技術について、病院や介護施設との実証実験を実施することでさらなる効果検証と精度向上を重ね、2023年度中にサービス化する考えだ。