ジェット噴流などの速度場変動を可視化、超高速・複雑現象の解明へ

超高速な物理現象を捉える。高精細で連続撮影可能な「高速度カメラ」は、物理を解き明かすための強力なデバイスの1つだが、最新鋭のそれをもってしても撮影速度が十分とは言い難い、昨今さらなる高速化が望まれているという。

東北大学大学院工学研究科野々村拓准教授ら)の研究グループは、画像と音響という2つの異なる同時計測データに対して、圧縮センシングと呼ばれる少ない観測データから元の情報を復元する信号処理(例:MRI画像)を適用することで、撮影速度の向上と計測空間の大幅な拡張を実現できる「時空間超解像計測技術」を開発した。同センシングでは流体のもつ"流体らしさ"を利用して、速度場の欠損した情報を再構成している。

また、空間上の各点における流体(空気や水)の速度を表現したもの――ジェット噴流や渦などは局所的に異なる速度と方向を持ち、これを観測することで流れの運動を示せる――速度場は、本来3次元空間上の3方向成分として表現されるが、今回は観測上の都合により、2次元平面上の2成分のみの分布を速度場と呼んでいる。

同技術は、時間解像度は高いが空間解像度の低いマイクロフォン(点センサ)と、空間解像度は高いが時間解像度の低い高速度カメラの撮影画像を、低次元モデルで融合し、時間と空間の解像度を両立した画像を再構成するものだ。これを超音速ジェット噴流の速度場および音響の計測に適用し、これまで計測が難しかった速度場の変動を連続的な画像として、50倍の撮影速度で再構成することに成功した(下記参考動画)。

新開発技術には汎用性があり、種々の可視化手法と点センサを組み合わせることで、流体力学に限らず様々な分野の超高速・複雑現象の理解を飛躍的に発展させるだろうという。研究成果は科学誌「Journal of Visualization」(参考動画"Supplementary Information"欄)に掲載された。