建設DX、AIを活用してシールドマシンの掘進方向を制御する

建設業界では昨今、品質・生産性アップと技術伝承が課題となっている。熟練者でなくてもシールドマシン(掘削機)が操作できる、各種ITで高度に機械化したしくみの技術開発が業界全体で取り組まれている。

シールド工事は、ダムや山岳トンネル等の工事よりも情報化・機械化が進んでいるが、マシンの方位・傾斜角や土圧を見ながらオペレータが掘進パラメータを調整――その操作技術は個人差があり、暗黙知とされ、明確なルール定義が困難であった。シールドマシン制御の全体的監視でDXが遅れていたという。

西松建設は、独自開発中のNS BRAINs('17年12月発表)を活用し、シールドマシンや関連設備等から掘削関連データを集積し、当該データをAIモデルに事前学習させるシステムを開発した。最重要管理項目で工事の成否に大きく関わる、シールドマシンの位置・姿勢(掘進方向や傾き)を計測・算出し計画線形との偏差を正確に把握するだけでなく、運転操作や掘進パラメータの全体的監視/方向制御に関わる作業を軸にAIで支援する。

同システムは「シールドマシンからの膨大な時系列データを学習したAIモデルにより、マシンの掘削状況を把握するとともに、掘進管理データを基に直後の掘進方向を瞬時に推測」「 ジャッキ選択(オン/オフ)、ジャッキ圧力制御など方向修正の方式に対応」「AIモデルはシールド工事の各種計測情報を一括管理するNS-BRAINsプラットフォームで動作するアプリとして、他のアプリ(線形管理、余掘り管理ほか)との連携も可能」だという。

熟練技能者の操作技術を約50リングの間で学習し、現場毎に最適化されたAIモデル構築等もできる。新開発システムの運用により、同社は、シールド工事現場でAIに掘進パラメータの変化を学習させつつ随時判断をさせて、従来式との比較評価を行い、オペレータによる操作比重を下げ、掘進方向制御の自動化を進めていく考えだ。