広範かつ効率的な調査手法の確立が宿願であった。日本で、「バケツ一杯の水」から存在する生物の種類や分布が分かる革新的な調査技術「環境DNA」が大いに発展し、MiFish法(魚類の網羅的解析法)が開発された。水中や土壌中に存在する生物由来のデオキシリボ核酸を抽出・分析する。環境DNA調査は現場での作業が圧倒的に少なく、高頻度での生物調査を実現する画期的な方法として注目されているという。
環境DNAを利用した生物多様性観測ネットワーク「ANEMONE」を主催する東北大学大学院生命科学研究科(近藤倫生教授)と、日本郵船、近海郵船、南三陸町、アースウォッチ・ジャパンは2日、環境DNAを用いた魚類調査によるビッグデータ「ANEMONE DB」をオープンデータとして運用開始した。1日には13法人・団体と4個人を発起人としてANEMONEコンソーシアムが発足している。
その一般公開は世界初だという。ANEMONE DBは、日本で確立された環境DNAによるデータベースで"生き物の天気図"として幅広い業界での利活用が期待されている。2017年から研究者と市民ボランティア約200名が全国861地点、4,298回に渡り実施してきた環境DNAを用いた魚類調査によるビッグデータとして構築されてきた。南三陸町では温暖化による魚類生態調査で活用。志津川湾での南方性種出現の検知へつなげている。
今後は同コンソーシアムが主体となり、上記DBの利活用推進セミナー等の啓発活動、ワーキンググループ立ち上げにより、専門的な知見の共有も展開していく。共同事業体は23年3月末までに100企業・団体の規模に拡大する計画を掲げている。