V2X、停電時にはEVからの給電でエレベーターを利用可能とする

広域災害に伴う大規模停電と、それに起因する社会インフラ機能の長時間停止が大きな課題となっている。日本では近年、高層ビル・マンションなど、エレベーターが不可欠な建物において、非常時電源として太陽光発電設備や蓄電池等を整備し、災害レジリエンスを強化するニーズが高まっているという。

日立ビルシステムは、EV・電気自動車と建物をつなぐV2X(Vehicle to X)技術によって、停電時にエレベーターなどのビル設備へ給電を行い、継続利用を可能とするシステムを開発した。同社はこれまで日立とともに、大規模地震をはじめとする広域災害時の復旧対応体制の強化、エレベーターなどのビル設備への影響を低減する機能・サービスの開発、提供を進めてきた。

今回開発したシステムは、停電発生時に、V2X対応充放電装置であるハイブリッドPCS――太陽光発電設備用と蓄電池用の2つのPCS(直流交流交換装置)を一体化した仕組みを使用して、エレベーターなどのビル設備の電源をEVからの給電に切り替えるとともに、エレベーターについて分速30mの低速運転に変更する制御を行うもので、最大で10時間程度エレベーターを継続運転させることを可能にする。

上記継続運転時間は、フル充電状態の40kWhのバッテリーを搭載したEVから、5階建てのビルに設置された標準型エレベーター「アーバンエース HF」(15人乗り、定格速度分速105m)に給電を行った場合の理論値であり、使用条件等により数値が異なるにしても、冒頭に述べた社会課題の解決策である"災害に対するレジリエンスを向上"することは確かだろう。

2022年中の実用化に向けて、ビルソリューションの研究開発などを行う自社の亀有総合センター(東京都足立区)に同システムを導入しているという。同社は今後、非常時電源対応/電気自動車連携の実証(実験動画:YouTube)をさらに進めていく構えだ。