インフラ点検業務をDX、未学習の異常も高精度検出するAIにて

世界でインフラ保全の重要性が高まっている。日本国内では、道路・橋・トンネルなどが急速に老朽化していくうえ、少子高齢化という社会課題が重しになっていて、さらには危険な場所での点検員の負担軽減も課題であり、安全で効率的なインフラ保全を実現するAIの導入が求められている。

国交省サイトにあるようなインフラ保全、その効率化には異常の早期発見が必須である。ドローンやロボットなどを活用すれば省力化にもつながる。ひび・さびなどの異常は、大量の類似画像と正常画像を専用AIに学習させれば検出可能となる。が、インフラ施設で発生する異常や変状は、水漏れや油漏れ、落下物や異物の付着、部品の脱落など多様である。

不特定な異常は点検画像を軸にしたいくつかの手法で検出できるが、山岳地の鉄塔、橋梁の高架下、洋上風力タービン、太陽光パネルの裏面などは立ち入りが難しく、学習用データの大量収集や、正常時のそれと精確に位置合わせした画像の撮影が困難である。作業負担の軽減が望まれているのに、危険な場所こそ、AIの導入および点検作業DXの妨げになっているという。

東芝は、学習が不要で、点検個所の正常画像を数枚用意するだけでひび・さびのほか、水漏れや異物付着、部品脱落など発生頻度低ないし未学習の異常も高精度に検出するAIを開発した。同AIは、点検画像と正常画像の比較を、学習済み深層モデルの特徴量を用いて行う。さらに独自の補正技術により、撮影位置や角度のずれがあっても高精度に異常個所を検出可能とする。

特徴的なパターンを異常として検出してしまう過検出も抑制する。同AIは公開データセットによる評価で世界最高精度の91.7%を達成したという。同社は、これにより、インフラ点検の省力化・自動化および異常の早期発見を実現し、社会インフラの長期安定稼働に貢献していく構えであり、同AIの詳細を5月25日に国際会議ICIAP2021で発表する。