腰の痛みが3ヶ月以上続く慢性腰痛(CLBP)は、世界的にみて最も生活に支障をきたす年数が長く、働く人のパフォーマンス低下にも影響する症状であり、その対策は社会課題の一つになっている。最も有用なのは患者教育と運動療法だが、その方法は未確立で、運動は続かないことが難点だという。
東大病院の22世紀医療センター、運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座の松平 浩特任教授は、塩野義製薬と、働く世代の患者へ、SNSを活用した会話ログと運動をAIにより紐づけて継続的にリモートで提供し、その有用性を検討した(NIPH臨床研究情報ポータルサイト試験ID:UMIN000041037)。
結果、痛みを緩和するための薬物治療を含む通常診療を受診した患者群と比較して、通常診療に加え患者教育と運動療法をセットにしたプログラムをモバイルアプリで実施した患者群の方において、慢性腰痛が改善していることがわかった。スマホとともに普及したモバイルアプリを臨床で活用することが、患者のライフスタイルに合わせて短時間かつ簡便に運動を習慣化することにつながる、有効な手段のひとつであることが明らかになった。
慢性腰痛に対する運動療法はエビデンスのある治療法として広く普及しているが、薬の処方とは異なりオンライン診療ではそれを継続・遵守することが困難なことなど導入に障壁がある。今回の研究結果は、慢性腰痛に関連する分野でのオンライン診療への発展も期待されるという。成果は、医学雑誌「JMIR mHealth and uHealth」オンライン版に掲載された。