医療・ヘルスケアDX、EPS重症度判定にAIを活用する

錐体外路症状(EPS)は抗精神病薬の投与後に発症する副作用の中でも高頻度にみられる。代表例に、本人の意思とは関係なく身体の一部に異常で不規則な運動が生じるジスキネジア、唇や手に律動的な震えが起こる振戦、筋肉のこわばり、意志と無関係に首や体幹が傾くジストニア等がある。

なかでもジスキネジアは、抗精神病薬を服用中の患者の20~30%に出現するとされ、一度生じると投薬を中止しても持続して出現する難治性の症例もあることから、症状が軽微なうちに処方を変更するなど、初期段階における対応の重要性が指摘されている。ゆえに、患者がEPSのどの症状に該当するかを発症初期に的確に判別することや、症状の進行度合いを把握することは、その後適切な治療を行ううえで極めて重要である。

EPSの各症状を発見するためには、家族やケアマネージャーなど患者の身近な人物が早期に気づいて、医師の診断を仰ぐことが肝要――だが現状、一般の人が発症を見極めることは難しい。それが早期発見を妨げる要因になっているという。ISID名古屋大学は4月26日、EPSの早期発見・早期治療の実現に向け、AIを活用したEPS重症度判定の共同研究を開始したことを発表した。

EPS研究の第一人者であり、世界23カ国語に翻訳されたEPS評価尺度「DIEPSS」の開発者である名大大学院医学系研究科精神医療学寄附講座 稲田俊也特任教授の研究総括の下、患者の顔動画を用いてEPSの重症度判定を行うAIモデルを共同開発する。当該モデルの開発には、ISIDが提供するAIモデル開発・運用自動化ソリューション「OpTApf」を活用する。

今回の共同研究を通じて、両者は、ライフサイエンス・ヘルスケア分野における新たな仕組みづくりを目指す。上記AIモデルについてはアプリケーションへの展開などを見据えていて、開発後には早期発見・早期治療の実現につなげていく構えだ。