自分のデジタルIDをオンラインサービスごとに見せ方を変えて使う

個人が自身の属性情報を管理し、サービス提供者に必要な情報のみを提供する。自己主権型アイデンティティー(ID)は、情報漏洩のリスクを低減できる仕組みとして近年注目されている。オンラインサービスに必要な本人確認や、資格、経歴などの個人の属性情報は――

住所=自治体、就業情報=企業、学業情報=大学、資格=実施団体といったように各管理者が違うため、企業や団体を超えた活用に向けて技術標準化が進められている。が、サービスごとに必要な属性情報や本人が開示したい属性情報は異なる。特殊なデジタル署名方式など様々なプロトコルが併存しているなか、各プロトコルがシームレスに連携して情報を開示できるサービス基盤が求められているという。

慶應義塾大学SFC研究所富士通は、個人がデジタルで管理する自身の属性情報(ID)を組織やサービスを超えて活用できるデジタル社会の実現に向けて、異なるID基盤を相互接続して自己主権型で連携利用する実証実験を今年3月17日~4月12日に実施し、国内で初めて有効性を確認した。

次世代デジタルアイデンティティー基盤から実験的に発行したデジタル学籍証明書をID変換ゲートウェイでトランスフォームし、学生が「IDYX」と連携する各種オンラインサービスごとに要る属性情報を異なる見せ方で開示できることを証明した。この仕組みを実用化すれば企業や大学、自治体が発行する個人の属性情報を、利用者自身が多様なサービスに連携利用できる。

大学が発行した学生情報を就職活動や卒業後のリクルーティング、旅行会社の学生割引サービスに活用するなど、デジタルIDによる利便性の向上が期待されるという。両者は今月、上記成果も生かしデジタルアイデンティティーを軸にインターネット上で信頼性を担保できる構造設計や技術開発を行う共同研究拠点「トラステッド・インターネット・アーキテクチャ・ラボ」を湘南藤沢キャンパス内に新設した。