仮想開発基盤にて車載アプリを素早くデザイン、動作評価も行える

自動車のコンピュータシステム化が一層進んだ。昨今、ソフトウェアがクルマの新しい価値を創出するようになり、アプリケーションは大規模化・複雑化――。より短いサイクルで信頼性の高いソフトウェアが開発できる、新手法や環境が求められているという。

ルネサスは12日、E/Eアーキテクチャ(電気・電子システム構造)の進化に応えるため、アプリソフトの先行開発と動作評価を実現する仮想開発環境の提供を開始した。同環境には、デバイスや評価ボードの準備が整う前からアプリを開発できる「バーチャルターンキープラットフォーム」と、開発したソフトウェアの動作を模擬解析・評価できる「マルチコアデバッグ&トレースツール」とが含まれる。

上記プラットフォームは、仮想開発基盤R-Car VPF――Synopsys社製VDKsをもとに、R-Car固有IP(知財)の仮想モデルを追加しカスタマイズした――上に、動作検証済みのソフトウェア開発キット「R-Car SDK」を搭載したものだ。実チップを高精度再現していて、複数エンジニアが各自のPCやサーバ上で、複数のソフトウェアを同時開発できる。

その後それらの1チップ統合検証が必要となる。多様なリソースからなるソフトウェアを統合した段階で動作に不具合が生じれば、その解析や解決に多大な労力を要する。そこで同社が開発した上記ツールでは、実デバイスで動作させるのと同様に、ヘテロジニアス構成のR-Car全体の同期・同時デバッグが可能になるため、問題が見える化され、開発期間の短縮を実現する。

E/Eアーキテクチに適したソフトウェアを一層短いサイクルで開発・市場投入していくことが可能になる。バーチャル開発環境は、同日より車載ゲートウェイ用システムオンチップR-Car S4向けに提供し、R-Car V4H向けならびに新たに開発するR-Carや車載用マイコンRH850用にも順次対応していくという。