大量トランザクション内の不正を1msで推論処理、量子暗号対策にも

世界中の金融機関は、不正行為が収益や消費者とのやり取りに与える影響に苦しんでいる。直近の共同調査によると、対象7ヶ国の消費者のあいだではクレジットカード詐欺が最も一般的で、不正防止の最高責任者は銀行と決済ネットワークだとされている。

新しい調査Reportで上記実態が明らかにされているが、AI推論の処理時間の問題により、ディープラーニングモデルをリアルタイムで大規模に実行することが困難ゆえ、従来、不正検出モデルは大量トランザクションの10%未満でしか実行されず、相当量の不正が検出されていなかったという。

IBMは5日、オンチップAIアクセラレータを搭載し、パフォーマンス最適な推論を可能とする次世代システム「IBM z16™」を発表した。この技術革新により、クレジットカードやヘルスケア、金融取引などのミッションクリティカルなワークロードにおいて、顧客は大規模なトランザクションをリアルタイム分析できるようになる。近未来の脅威から保護できるように設計されているz16は5月末から出荷される。

同システムは、IBM TelumによるAI推論と、高い安全性と信頼性を備えた大量トランザクション処理を融合。1ミリ秒 (カード不正検出モデルでのベンチマーク結果)でAI推論処理を実行し、3000億回/日のAI推論ができる。消費者にとって、クレジットカード防衛時間・労力の軽減につながる。

業界初の耐量子暗号システム(NIST PQCアルゴリズム向けAPI提供)として、データとシステムを保護するための新しいセキュリティを構築する"格子ベースの暗号化方式"(参考資料:CRYPTREC)を基盤としている。IBM z16の耐量子暗号により、顧客企業は今日からアプリケーションとデータを将来にわたって保護できるという。同社は同日、日本で「IBM Z and Cloudモダナイゼーション共創センター」を開設した。