外科手術におけるガーゼ残存等の確認をAIソフト搭載装置にて支援

医療の安全対策は必須だ。外科においては手術の前後に、執刀医、麻酔医、看護師など手術室に入る医療担当者によって、ガーゼ、縫合針、鉗子などのカウントが行われている。手術直後には回診用X線撮影装置を用いて、患者の体内の異物遺残の有無が確認されている。

医療施設では異物遺残の防止対策が確実にされているはずだが、この頃依然として、外科手術後の体内でのガーゼ残存等が発生している。医療事故は患者の身体的リスクとなるだけでなく、医療施設の社会的信頼性に影響を及ぼす。対策費用は年間35億円との調査報告(名古屋大学大学院医学系研究科「医療の質・患者安全学講座」調査結果)があり、医療施設の経営面でも重要な課題になっている。

手術後のX線画像による確認作業については、画像上で体内の異物が骨と重なっていた事例など、さまざまな原因で遺残物を見逃してしまう課題もあったという。島津製作所は、AI技術を用いた「遺残確認支援ソフトウェアSmart DSI」を開発した。新ソフトウェアを同社のX線画像診断装置のワークステーション用プログラムとして、今月7日より国内で販売する。

手術後に患者をX線撮影した後、ガーゼや縫合針、鉗子などが体内に残っている場合には、遺残物の可能性がある領域を抽出し、色付表示にすることで遺残物の確認を支援する。回診用X線撮影装置「MobileDaRt Evolution MX8 Version cタイプ」に、「遺残確認支援ソフトウェアSmart DSI」を搭載した場合は、X線撮影後本体モニタに表示される処理画像をその場で確認できるという。

同社は、上述の課題解決を目指し、物体検出に優れているAIの深層学習を用いた遺残物確認支援技術を今回開発した。見てわかりやすい、遺残物の可能性を強調表示する上記新ソフトウェアにより、患者の安全・安心に役立つとともに、多忙な医療従事者の負担低減を支援していく構えだ。