データ駆動型の自動実験ロボで材料探索、Li-O2電池寿命を2倍に

電気で成り立っている現代社会は蓄電池で一層高度化される。モバイル、EV、小型無人機、スマートグリッドやBCP(事業継続計画)領域で需要大のリチウムイオン電池は限界性能に迫っていて、新しい反応原理に基づいた蓄電池の早期実用化が期待されている。

負極に金属Li、正極に大気中のO2を活物質として利用する"リチウム空気電池"は、リチウムイオン電池の2~5倍超のエネルギー密度を実現でき、革新蓄電池の最有力候補――だが、実用化に際して、充放電サイクル数の少なさが課題となっている。正極・負極双方で高い反応効率を実現する電解液材料の開発が最大のボトルネックであり、従来手法では、電解液に含む添加剤の合理的な設計が困難であったという。

NIMSは、独自開発した電気化学自動実験ロボットとデータ科学的手法を組み合わせた新しい材料探索手法を確立した。同手法をリチウム空気電池用電解液材料探索に適用し、充放電サイクル寿命を約2倍向上させる電解液材料の開発に成功した。この研究は、JST「ALCA-SPRING」および「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」政策重点分野/環境エネルギー分野の研究開発の一環として行われたものだという。

研究チームは、電解液の調合とその電池性能評価を人力の100倍以上の速度で実施可能な、自動実験ロボットの開発に取り組んできた。今回、同ロボットにより得られた大量の実験データに対して、ベイズ最適化に代表されるデータ科学的手法を適用することで、材料探索の効率化を試みた。そして約1万種類以上の電解液材料の評価を実施し、リチウム空気電池の充放電サイクル数向上を実現する電解液材料の発見を達成した。

このたび確立した材料探索手法は、次世代蓄電池開発を加速するうえで有力な手法となることが期待されるという。研究成果は『Cell Reports Physical Science』に掲載された。