LPWA×微生物燃料電池のしくみにて湖沼等の計測データを遠隔監視

閉鎖性水域の一部では極端に酸素が乏しくなり、水生生物の生育や水利用等に障害が生じる。貧酸素化しやすい水底付近でも水生生物が生存できる場を保全・再生するため、2016年3月に環境省告示第37号が発布された。

「水質汚濁に係る環境基準についての一部を改正する件の施行」(同省PDF)で、底層DO(溶存酸素)の水域類型及び基準値が設定されたが、常時その場でデータを監視することは現実的でない。ゆえに産学で、長期間メンテナンスフリーかつ安定・連続計測可能なデバイスを開発し、実証実験を行ってきたものの、計測データを定期的に回収しに行かねばならなかったり、遠隔地のデータが取得しづらいなどの課題があったという。

西松建設は、和歌山大学および群馬大学との共同研究により、LPWA(低消費電力・広域無線通信)装置と一体化したMFC(微生物燃料電池)式のDOバイオセンサー/LPWA-DOバイオセンサーを開発し、実証実験にて遠隔地で計測データを受信できることを確認した。今回研究に参画した和歌山大学ではLPWAの一つLoRaWAN方式を宇宙衛星に利用した安価な環境観測システムの開発・実証を進めている。

同システムとLoRaWAN衛星通信を利用することで、通信距離や地上受信局の有無を気にすることなく、全国どこからでも遠隔監視環境モニタリングが可能になるという。3者は、データ取得が困難であった場所や湖沼等の水域監視も容易になるとして、MFCの発電性能を高めたLPWA-DOバイオセンサーシステム全体の自立電源化を進め、規定値になったらPC・スマホにアラート送信するなどアプリの改良を行なっていく。

MFCは底質環境を浄化しながら同時に発電もできる創・省エネルギー型の先進的な環境技術であることから、今後もSDGsに寄与する応用技術の研究開発を推進し、水質環境の適正化、生物多様性保全、脱炭素社会の実現に貢献していく構えだ。