南極にローカル5G基地局、隊員の安全性向上と作業負担軽減に向けて

世界の気象観測網の拠点であり、日本を出発した南極地域観測隊のうちおよそ30名の隊員が1年間活動を行う。そこではインテルサット衛星経由にて観測データの常時送信や有線インターネット利用ができ、基地主要部の屋内でWi-Fiも使えるが――

屋外においては、トランシーバーがほぼ唯一の通信手段であるという。極地研NECネッツエスアイは、昭和基地のスマート化を目指した産学連携共同研究として、第63次南極地域観測隊とともに、南極域では世界初となるローカル5G(技術等解説資料:総務省PDF)を活用した移動無線通信システムの実証実験を昨年末に開始。来年1月までローカル5G・自営BWA・sXGPシステムの構築と電波伝搬試験、野外からの映像中継の試験を行う。

ドローンや自動運転などの活用を見据えた環境整備を行う。今回、昭和基地の基本観測棟屋上にローカル5G基地局が設置された。そこで使用する4.8GHz帯電波は直進性に優れ、昭和基地主要部と北の浦を中心とする海氷上でローカル5Gサービスが利用可能となる。広帯域低遅延回線を活かした映像中継や、基地設備の遠隔監視を実施し、隊員の安全を向上するとともに作業負担の軽減を図るための応用に向けた検討も行う。

実証実験に用いる携帯端末は、ローカル5G網にて屋外からの映像伝送、隊員間の情報通信端末として利用できる。昭和基地ネットワークおよび衛星通信回線を介してインターネットに接続することで、日本国内からの遠隔観測支援など、多様なサービスが利用可能となる予定だという。

両社は、上記実証実験の結果をもとに、昭和基地における大容量・高速・広範囲のデータ通信環境を進化させ、先端技術を活用することで同基地のスマート化を推進する。基地設備の監視や遠隔制御、隊員の安全確保、隊員間のコミュニケーション、観測機器の制御や新たな観測方法など、様々な面で南極観測の高度化を進めていく考えだ。