5G基地局を仮想化、高品質通信を担保しつつCO2排出量を5割削減

汎用CPUの性能向上、テレコム機能のソフトウェア化などが進んでいる。昨今、汎用サーバーで構成され、かつ要件ごとの専用ハードウェア開発が不要な「仮想化基地局」の導入が注目されている。柔軟な機器調達や局構築コスト削減に役立つ、無線基地局仕様のオープン化の潮流もある。

O-RANに代表されるその流れとともに、携帯電話のユーザーニーズやユースケースに応じた自由度の高い通信サービスの提供が期待されている。専用機器で構成されない仮想化基地局はしかし、性能効率が低下する傾向を有し、従来型の無線基地局と同等の性能を維持するのにより多くのハードウェアを組み込むことが求められる。結果、消費電力などの環境負荷が高まってしまう。安定性や冗長性においても、キャリアグレードの通信品質を十分に担保できない場合があったという。

富士通は、5G SA(スタンドアロン)方式対応の、ソフトウェアにより仮想化した基地局を開発した。そしてその新たな仮想化基地局を、3月より通信事業者向けに検証用として提供する。O-RAN仕様に準拠した同基地局は、高い通信性能や高キャパシティ(通信可能な範囲を2倍から4倍に向上)、最適な演算リソースの配分を実現する独自技術により、従来の仮想化基地局の課題であった低消費電力化と高性能化の両立を実現する。

高品質かつ安定した通信を提供しながら、システム全体のCO2排出量を50%以上削減することが可能になるという。新開発製品の技術には、NEDOの「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業(c1)仮想化基地局制御部の高性能化技術の開発」(関連資料:経産省PDF)の成果の一部が活用されている。

新開発した仮想化基地局を「MWC Barcelona 2022」にて披露する。富士通は、同基地局をグローバル展開する予定で、通信事業者の脱炭素化を支援し、持続可能な社会の実現に貢献していく構えだ。