糖尿病患者のQOL改善に向けて、AI活用による保健指導はじまる

世界第2位の人工透析大国。日本の透析患者はおよそ34万人いて、糖尿病性腎臓病の重症化による患者数が約4割を占めている。透析治療により、患者のQOLが低下するうえに年間約500万円/人の医療費負担が生じる、この国全体では、年間約1.6兆円の公的医療費が必要となる。

日本透析医学会調査及び厚労省PDFから上記実状がわかる。今日、糖尿病の合併症として発症する糖尿病性腎臓病の重症化を予防することは、健康寿命を延ばすだけでなく、医療保険財政を健全化する点からも喫緊の課題である。そのためには、患者の行動変容+医療機関受診による治療の継続が求められるという。

金沢大学東芝東芝デジタルソリューションズSOMPOホールディングスは、重症化関連リスク因子を算出するAIを共同開発。金沢市のかかりつけ医、石川県栄養士会、中等度腎機能障害を併発した糖尿病患者の協力のもと、「糖尿病性腎臓病重症化予防プログラム」(同省資料)の実証研究を進めていて、その一環として今月、同重症化予防と患者のQOL改善に向けて、当該AIを活用した保健指導を開始した。

中等度腎機能障害を併発した糖尿病患者30名の健診結果を解析し、現状維持が望ましい検査項目/改善が望ましい検査項目がわかる各個人のリスク状況を記した「生活習慣の維持/改善目標シート」を作成。このシートを活用して、管理栄養士が患者への保健指導を行う。従来の健康指導を組み合せることで、糖尿病患者の生活習慣とQOLの変化を検証する。

AIの解析結果に基づく保健指導に加え、管理栄養士が持つ保健指導のノウハウを結集させることで、糖尿病性腎臓病の重症化を防ぎ、患者のQOLの向上、および医療保険財政の健全化を目指す。今回の実証研究を通じて得られたデータを基に、4者は、糖尿病性腎臓病の重症化予防方法の有効性を検証し、医公民で連携しながら上記プログラムの社会実装を推進していく考えだ。