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世界最高峰スパコンにより大規模物性DBを構築、新法則等の発見も
そうすることで、「機能」から「マテリアル」へと至る逆問題を高効率に解くことが重要になる。が、無機材料のデータ量は「スモールデータ問題」と呼ばれるほど少ないため、機械学習の手法を有効に活かせず、広範囲の材料空間を効率的に探索できていない。それゆえ、マテリアルDXにおいて、我が国の国際競争力を向上するためには、世界に先んじて材料開発にとって利用価値の高い高品質のデータを創出し、物性ビッグデータを実現する必要があるという。
東京大学物性研究所と物質・材料研究機構は共同して、スパコンランキング4部門・4期連続1位を獲得した「富岳」上で、膨大な数の不規則系磁性材料を自動網羅的に探索し、物性データを創出可能なソフトウェア「AkaiKKR」の開発を行った。「富岳」と同ソフトウェアを用いることで、約15万個の4元高エントロピー合金に対して全電子・電子状態計算を適用し、大規模物性データベース(DB)を構築することに成功した。
上記DBは不規則性磁性材料における電子状態、磁気特性、伝導特性を含んでいて、世界で類を見ない非常に利用価値の高いものになっているという。両者はさらに、機械学習を適用することにより、磁気特性を決定する支配因子や電気抵抗率の法則性の発見にも成功している。
「富岳」成果創出加速プログラムの一環で、膨大な不規則性磁性材料の物性データを短時間で創出可能であることを実証した。マテリアルDXの推進基盤となりうる、物性ビッグデータ実現の道筋を見いだした。科研費、CRESTとJST MIRAIの支援も受けて行われた。上記共同研究の成果は、米国物理学会誌(電子版)に掲載された。