量子コンピューティング技術により保守部品の配送効率アップへ

形あるものは壊れる。現代の産業・社会を支えているICT(情報通信技術)機器や各種システムも例外ではなく、動作異常が通知されたり、予期せぬシステム停止等が発生したりすれば、その現場にカスタマエンジニア(CE)が急行し、故障ないしその疑いのある部品を交換する。

他社製品についても、CEが客先に出向いて保守作業を行う。その保守サービス会社では、首都圏で一日あたり数百件の作業を行っている。CEのスキルや到着時間を基にした出動計画に沿い、交通事情を加味しつつパーツセンターから部品を配送する。緊急、定期保守、時間指定など様々な条件があるうえ、配送エリア、部品の種類・サイズ、トラックやバイク等配送手段の組み合わせは膨大で、効率的な配送計画を立案できる人材が限られるという。

NECは、主にICT機器の保守サービスを提供しているNECフィールディングの保守部品の配送効率向上に向けて、量子コンピューティング技術を活用した実証実験を開始した。首都圏での部品配送について過去のデータをもとに試算した結果、配送車の削減や距離の短縮化などにより配送コストを3割程度削減できることを確認しているという。

両社は今回、大規模な組み合わせ問題の超高速処理を実現する「NEC Vector Annealingサービス」を活用して、配送効率の向上によるコストの削減とCO2削減、配送計画の立案の属人化解消などを目指す。今月より現場での一部保守サービスにこれを適用し、来年度の本格導入に向けて配送計画の精度向上と運用面の検証を進めていく。

従来型コンピュータで1万年かかる計算を即座に行うという次世代技術への注目が高まる中、NECは、生産計画の最適化や金融領域における機械学習の精度向上など様々なユースケースの開発に取り組んでいて――企業・大学による量子コンピューティングの利活用を推進――複雑化する社会課題の解決に貢献していく考えだ。