社会インフラ点検DX、山や丘にあるのり面をデジタル技術で監視する

社会インフラの効率的な維持管理が大きな課題となっている。国土の7割を山地や丘陵が占めている日本では、全国の道路沿いに人工的に作られた斜面(のり面)が無数にあり、地球規模で自然災害が多発・激甚化する中、それらは他の道路施設と同様に、風化や老朽化が進行している。

道路を構成する主要構造物である"のり面"の安全管理が社会課題になっている。そこで、平成29年に国土交通省から出された「道路土工構造物点検要領」の下、のり面の保守点検が各地で行われている。点検時には土木技術者が斜面に登り、近接目視確認を行う。従来のしくみでは高所・急斜面などでの危険な作業を要するうえ、その数や面積が膨大なために多くの人手と手間がかかっていたという。

リコーは今月、社会インフラ点検業務のDXに向けた取り組みの一環として、宮崎県と協同で、のり面の点検を同社製「のり面モニタリングシステム」で行う大規模実証実験を開始する。複数のラインセンサーカメラとLiDAR(光検出&測距)を搭載し、高さや幅が広いのり面でも一度に高画質な画像を撮影する。同システムは、3次元計測によるのり面形状の経時変化追跡、のり面の崩壊予兆の把握ができる。

AIによって自動的に亀裂やはく離、ひび割れなどの変状を抽出――劣化状況の全体感をつかめる。高画質での近景出力も可能で、細かな確認が必要な場所の様子も詳らかにできる。撮影回数を重ねることで変状の経時変化を取得できるようになり、効果的な点検計画の立案にも貢献するという。同システムでの測定結果と、宮崎県が大量保有している人手での点検結果とを突合し、システム精度や効率化度合い等の検証を一気に行う。

点検業務DXを推進する新技術の実用化を加速する。同社は、既存の"路面""トンネル"モニタリングサービスに"のり面"を加えることで、道路全体の点検を可能にし、より安心安全なまちづくりの実現を目指していく構えだ。