地上と上空からの見た目を高精度に照合、災害状況把握に活かす

自然災害はいつどこで起こるかわからない。水害や地震等の発生時には、被災者の救助や生活再建を迅速に行えるよう、被害を受けた場所や範囲、状況を即座に把握することが重要だ。その方法として、市民から自治体等へ提供される災害状況を撮影した画像の活用が期待されている。

従来、ランドマークとなる建築物が写った位置情報付き画像と照らし合わせることで場所を推定――これまでの手法では限られた場所以外での推定が難しい。そこで、NECは、地上で撮影された景観画像と、衛星画像や航空写真など上空からの撮像とを照合することで、その景観の場所を推定する技術を開発した。これにより、目印となる建築物が写っていない場合でも、広域をとらえた衛星画像・航空写真から撮影場所を見つけることが可能になるという。

同技術を用いた公開データセット(CVACT)による評価で、世界最高水準の照合精度85.6%(上空撮影画像8,884枚の検索タスクによる検索上位1%の正解率。地上撮影画像の画角が90°の場合)を確認した。実活用時には、撮影者の同意が得られた画像や写りこんだ人物を特定できない画像など、適切な人権・プライバシーに配慮した画像の利用を想定している。

地上で撮影した横からの景観画像と、人工衛星や航空機から撮影した上からの景観画像の特徴量の対応付けを学習する手法によって、視覚的な見え方が大きく異なる画像を高精度に照合できる。時間経過により移動・変化する被写体を景観から削除した画像を大量に自動生成して学習し、景観の変化に対応する。地上画像と衛星・航空写真との間で、車の移動、建物の取り壊し、伐採等により景観が変化していても、画像の場所を推定できる。

新開発技術をコンピュータ・ビジョン分野の主要国際学会「WACV2022」で発表した。同社は、この技術を自然災害の被害を受けた場所や範囲の推定に活用し、救助活動の迅速化等に貢献していく考えだ。