情報通信
量子コンピュータ時代に先駆け、PQCをソフト/ハードで実現する
個人情報、法人の契約・取引等データ、金融機関や行政機関における機密情報など、ネットでやりとりされIT機器で処理・保管されることが一般的なそれらを、悪人や犯罪組織が狙っている。サイバー防衛上、各製品への暗号技術搭載が不可欠となっていて、いずれ大規模な量子コンピュータが実現された場合でも安全に利用できる耐量子計算機暗号(PQC)は、次世代型の暗号方式として世界的に期待されている。
現在、米国NIST主導でPQCの国際標準化が進められていて、2024年までに標準暗号方式が選定される見込みである。選定においては、数学的な安全性と、物理的な安全性――PQC搭載システム・製品の動作を観測し操作して暗号解読する攻撃への耐性が求められている。あらかじめ物理的な攻撃を把握することが、次世代セキュリティの肝だという。
東北大学電気通信研究所(本間研究室)は、NTTと共同で、量子コンピュータでも解読が困難なPQCをソフトウェアやハードウェアで安全に実現する技術を開発した。同技術は、国際標準候補(KEM9種中8種)をソフト/ハードで実現した際に生じる物理的な攻撃への懸念を払拭するものであり、来るべきPQC製品の安全性向上と国際標準化活動に大きく貢献することが期待される。
JSTのCRESTおよびさきがけの助成(各研究領域:「耐量子計算機性秘匿計算に基づくセキュア情報処理基盤」、「バッテリレス無線センサネットワークのためのポスト量子暗号計算技術」)により得られた。上記成果は昨年末「ASIACRYPT 2021」にて発表され、国際暗号学会誌Vol.2022電子版に先行掲載された。