38万人分の市民ヘルスデータをAI解析、要介護リスクの個別予測に

およそ15年前に諸外国に先んじて65歳以上人口の割合21%超となった。以来「超高齢社会」をゆく――日本では、市町村が中心となって高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施を推進するための体制整備が進められているという。

神戸大学大学院医学研究科地域社会医学・健康科学講座 AI・デジタルヘルス科学分野の榑林陽一特命教授らと、日立製作所は、神戸市が構築した「ヘルスケアデータ連携システム」を活用した取り組みとして、65歳以上の神戸市民の健康・医療情報を対象に、AI(人工知能)技術による要介護リスクの解析研究を行う。

同研究は神戸大学が主体となり、日立独自の説明可能なAI技術――Lumadaの一つで特許取得済みの「根拠データ管理技術」(関連ニュースリリース)――を活用することで要介護リスク予測のブラックボックス化の解消をめざし、研究倫理委員会の承認を得た同市民38万人分の匿名化済み健康・医療ビッグデータから、住民一人ひとりに対する要介護リスクの予測及び予測根拠を提示する方法を開発する。

継時的なビッグデータ解析により、個人ごとに異なる介護リスク要因の特定に向けて予測性能を検証する研究が、政令指定都市スケールの大規模なコホート(追跡調査集団)で実施されることは、本邦初(神戸大学調べ)となる。大学主体の産学連携で行う、今回の取り組みで開発された要介護リスク個別予測モデルは、神戸大学から神戸市へ提供され、同市の保健・介護政策づくりに活用されることが見込まれる。

この度の研究の成果は、神戸市をはじめ全国の自治体において保健事業と介護予防の一体的実施に従事する専門職員の作業の負荷軽減や、適切なリスク個別予測による介護予防事業の質の向上につながると、期待できるという。当該研究を通じ、日立は社会保障費増大の抑制に貢献するとともに、人々のQuality of Life(QoL)向上に寄与することをめざす。