金融取引データを量子暗号化、高セキュリティ・低遅延伝送を達成

サイバー攻撃の脅威が増大している。近年、金融分野においてはデジタル化の急進展などにより、システムを取り巻く環境が大きく変化し、セキュリティ対策の一層の強化が求められている。 一方、株式取引においては「アルゴリズム取引」が広く普及――

株価や気配情報、出来高などに応じてコンピュータシステムが自動的に株式売買注文のタイミングや数量を決めて注文を繰り返す。日々膨大な取引処理が行われている。国内証券取引所における1日の株式等取引高は3兆円にものぼり、それら取引処理においては、膨大な取引データの伝送に耐えられる通信方式が必要とされている。

株式取引においては処理の遅延が機会損失の発生にも繋がる。ゆえに証券取引所はミリ秒未満の注文応答・処理性能を持つ通信ネットワーク基盤を提供している。社会通信インフラは5G・Beyond5G(総務省PDF)にも見られるように高速・大容量・低遅延化が進む。株式取引システムでも、大容量データ伝送、低遅延通信が高い水準で求められているという。

野村HD野村證券NICT東芝NECは、上記要求が厳格な株式取引業務をユースケースとした、量子暗号技術の有効性と実用性に関する共同検証を昨年12月に開始。実際の株式トレーディング業務で標準的に採用されているメッセージ伝送フォーマット(OANDA FIX仕様)準拠データを大量に高秘匿伝送する際の、低遅延性及び大容量データ伝送に対する耐性について国内初の検証を行った。

結果、①量子暗号通信を適用しても従来システムに遜色のない通信速度が維持できること、②大量の株式発注が生じても暗号鍵を枯渇させることなく高秘匿・高速暗号通信が実現できることを確認した。今後、金融以外の分野も含めた量子暗号技術の社会実装の加速が期待されるという。

上記検証は内閣府SIP「光・量子を活用したSociety 5.0実現化技術」の一環で実施されたものだ。