医療DX、潜在的な症状の訴えをチャットボットで抽出する

臨床試験において、患者報告アウトカム(PRO)という指標がある。それは医師による評価ではなく、患者自らの評価や症状の訴えなどの報告のことだ。

昨今の医療業界の課題として、医療現場の患者-医師間のコミュニケーションの円滑化がある。医師が患者の容態を確認する際、IT(情報技術)を活用することで――、上記課題の解決、エンゲージメントの向上、さらには医療過誤の抑止などが期待される。医療現場では、これまで取得できていなかった患者本位の症状や容態評価などの情報を蓄積して、効果的に利用できるとも考えてられているという。

TISは、国立がん研究センター東病院とITを活用し、患者の潜在的な症状をデータとして抽出するための共同研究を開始した。かねてよりヘルスケアプラットフォームを提供するとともに、多様なパートナーとヘルスケアサービスを通じて人々の健康増進や、医療費削減など社会課題の解決に取り組んできた。そして今回、同病院の緩和医療科(研究代表者:三浦智史氏)と協働する。

患者自身が表現しきれない潜在的な症状の訴えを新たなPROとして抽出し、そのデータをモニタリングすることで、患者の苦痛をスクリーニングし、患者-医師間のコミュニケーション改善の効果を検証する。第一フェーズでAIチャットボット"DialogPlay"を試験的に活用し、PROを抽出するための有効な対話シナリオを3月まで検証する。第二フェーズ以降では、新サービスの創出に向けた検証範囲の拡大を計画している。

PROとヘルスケアリファレンスアーキテクチャ(PHR POCテンプレート)を活用し、個人の健康・医療情報の管理に求められるセキュアかつ統一基準のシステム構築を実現しつつ、社会実装に向けたスピードと質を向上させていく。将来的には上記研究の成果を他の疾患にも応用することで、社会全体のより豊かな暮らしに貢献できる社会基盤の創出を目指すという。