通常の超音波検査を用いた画像は、血行動態評価と比べると、画像の客観的な定量化が困難である。ゆえに腹部超音波検査で得られる超音波Bモード画像のみによる、腫瘤の質的な診断が難しい。そこで、発見された腫瘤が治療を要する悪性の腫瘤か、治療を不要とする良性の腫瘤であるかの質的な鑑別には、造影剤を使用したCTやMRIなどによって血流の状態を診る、血行動態的な評価が用いられる。
腹部超音波検査画像に客観的な定量化ができるようになれば、腹部超音波検査単独での質的診断が可能となる。CTやMRI検査による被爆や医療費の削減に繋がり得る。画像の定量化方法として近年深層学習などのAI技術が注目されているが、これまでこのような手法は報告されていなかったという。東京大学医学部附属病院と、グルーヴノーツは、マルチモーダルAIで医療画像と診療情報を統合する、高精度な疾患画像判別モデルを開発した。
画像と数値など異なる種類のデータを同時に学習可能な深層学習AIの技術を用いて、腹部超音波検査画像と診療情報を統合する新しい肝腫瘤の疾患画像判別モデルを開発した。肝腫瘤の診断のために――従来の画像診断モデルは画像のみを学習させるのに対して――画像に診療情報を統合することで、判別モデルの精度を飛躍的に向上させることが可能になった。
検査画像と診療情報の統合による精度の向上は、超音波における肝腫瘤の判別だけでなく、さまざまな医療分野への応用を可能にするという。両者は、上記開発モデルについての論文を学術誌『Journal of Gastroenterology and Hepatology』にて発表した。