全ビール工場でAI活用、仕込・酵母計画を自動立案する

顧客ニーズが多様化している。昨今、その声に応えるため本社・各工場が連携して商品の製造計画を立てている。ビール類の原材料を仕込み、発酵する工程の計画は、熟練者の知見に頼る複雑な作業である。

ビールの醸造は「仕込」「発酵」「貯蔵」「濾過」「保管」の順でプロセスを進める(発泡酒・新ジャンルもほぼ同様)。商品パッケージング・出荷を見越し、仕込→発酵の工程ではどの液種をどのタンクに移していくかを計画する。さまざまな条件を勘案しながら立案する。それは作業に時間がかかり、技術伝承が難しい業務の一つでもあるという。

キリンビールは、NTTデータと共同でビール類を製造する「仕込」「発酵」工程において、AIを活用して最適な仕込・酵母計画を自動立案するシステムを開発した。同システムは今年10月時点で全9工場にて試験運用を行っている。現在、「仕込・酵母計画業務」における確実な熟練技術の伝承と、全工場合計で年間1,000時間以上(同業務での20年比)の時間創出を見込み、来年1月より本格運用を行う予定だという。

20年末に導入済みの濾過計画システムをベースに、両社共同で各工場熟練者へヒアリングし各種制約を洗い出し、制約プログラミング技術を活用して熟練者の知見を顕在化、かつ標準化した。新たなしくみについて、NTTデータは業務システム要件等の整理や、制約プログラミングエンジンの開発・チューニング等を実施した。今回、仕込・酵母計画がAI化の対象となる。

熟練のワザを取り込んだITシステムにより、仕込・酵母計画業務の属人化防止と技術伝承が実現できる。各工場では、上記創出された時間で一層の品質アップに向けた取り組みと、若手育成など人にしかできない価値創造を行う。「働きがい改革」のさらなる推進とより高い品質管理レベルの製造体制が期待できるという。仕込・酵母計画と、濾過計画の合計で4,000時間以上の創出も見込まれている。