大量映像から対象物を検知する、エッジコンピューティングを加速

車両や交差点のカメラ映像を分析して見守りや交通管制の最適化に生かす。他にも、店舗や倉庫のカメラ映像の分析による立ち入り禁止区域への侵入検知や施設管理の効率化など、映像分析は、多くの活用が期待されていて、カメラなどの近くにあるエッジ機器でのリアルタイム処理が理想だ。

現場にあるエッジ機器ではしかし、廃熱・冷却が難しく消費電力が制限される。GPUなどの高性能プロセッサーを利用できず、処理能力に制約がある。映像分析では、ディープラーニング活用ソフトウェア(AIモデル)によって撮像から分析対象物を探し出す"物体検知処理"を行う。高精度の物体検知AIモデルは演算量が多く、処理能力の限られたエッジ機器でそれを行うことは難しい。

一方、演算量を削減した高速な物体検知AIモデルを利用する場合、一般的に演算量と精度はトレードオフの関係にあるため、演算量を削減すると精度が低下して映像分析に求められる認識精度要件を満たせない、といった課題があるという。NECは、多様な映像分析に利用される基本要素――物体検知処理を、検知精度を維持しつつ効率的かつ高速に実行できる「漸進的物体検知技術」を開発した。

処理能力に制約があるエッジ機器でも大量の映像に対する物体検知について最大で約8倍の処理速度を実現する。「高速・高精度を両立した検知を実現」、「さまざまな検知対象や検知方式、AIチップに対応」といった特長を備えた。同技術を適用することで、現場にて大量画像の中から分析対象を効率的かつ高速・高精度に検知し、リアルタイムでの映像処理や複数台カメラの同時処理を行える。

当該技術の開発強化や実証を経て、22年度の製品化を目指すという。NECは社会の様々なシーンに映像分析技術の活用を広げていくことで、社会の安全・安心、利便性の向上に貢献していく。「漸進的物体検知技術」を今月17日より「ET & IoT 2021」にて披露する。