自動運航船の船出に向けて、デジタル技術活用システムを共同開発

物理空間のモノを仮想空間に再現する。デジタルツインは昨今、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)技術とあいまって、各種産業・社会の高度な仕組みづくりに重要な役割を果たし始めている。自動化や効率化に資するコンピューティングの波は、いまや船舶にも及びつつある。

日本財団の無人運航船プロジェクトMEGURI2040(20年6月リリース)にてフリートオペレーションセンターを担当している、JRCは今月2日、"K"LINEおよびYDKとともに、自動運航船の実現に向けた取り組みを開始した。3社は、AI等の先進技術を活用した操船者の的確な操船判断支援を目的とした統合操船者支援システムの共同研究開発契約を締結した。

今回、JRCの高度な無線応用技術・舶用機器開発技術、"K"LINEの安全運航に関わる知識・経験、YDKの舵角・推進制御技術の融合により、船舶の衝突・座礁等の重大海難事故を防止し、将来の自動運航船に繋がるシステムの開発を目指す。同システムは国際海事機関(IMO)が規定する自動運航船の開発段階基準"Degree One"を満たすことを想定している。

世界的な自動運航船開発の流れに従いつつそれを一層推進する。3社は共同開発パートナーとして、操船プロセスにおける①状況認識、②情報整理、③危険判断、④行動提案、⑤操船について、①ではカメラ・AI画像認識、②ではセンサーフュージョン、③ではAI衝突リスク危険判断、④でルート生成、⑤で操舵機・推進器制御を実現し、各技術から得られた情報を3D表示するデジタルツインUI、そして「統合操船支援システム」を開発する。

23年4月から多様な航路・船種による船上実証実験を行い、その後本格的な社会実装を目指すという。3社は、操船者への高度化支援と負担軽減の実現による船舶運航のさらなる安全性向上、ならびに自動運航船の具現化に向けた開発を継続していく構えだ。