超小型軽量の医療用8Kカメラと超高精細映像技術で遠隔手術支援を実証

走査線数がハイビジョンの縦横4倍、合計3,300万画素の超高精細映像8Kは、ほぼ"生"に近い。究極的な臨場感や実物感をもたらすものであり、日本でも関連技術・機器の研究開発が進められている。

今月2日、池上通信機は、同社とNESで共同開発した医療用8K解像度カメラMKC-820NP('19年5月ニュースリリース)が、8Kスーパーハイビジョン技術を医療応用する国家プロジェクト「8K腹腔鏡手術システム映像を伝送し遠隔で手術支援を行う世界初(NES調べ)の実証実験」で使用されたことを発表した。同実験はAMED「8K等高精細映像データ利活用研究事業」の一環として10月27・28日に実施されたものである。

MKC-820NPは、同社の医療市場での映像技術とノウハウに加え、放送で培った8K技術開発を基盤とした映像技術、さらにNESのこれまでの8K腹腔鏡カメラ開発および臨床試験の経験と知見の粋を結集させたカメラだ。従来機と比較して、質量で1/3以下、容積で1/7以下での開発を実現し、カメラスタンドに半固定の状態ではもちろんのこと、手持ち運用も可能なサイズになっているという。

NESと国立がん研究センターがその医学的有用性を確認した。8Kならではの超高精細映像による「本物にせまる立体感」を保持した手術映像を、画質と符号化・復号化遅延を最適化した状態で伝送し、遠隔地でも手術状況が詳細に把握できた。質の高い腹腔鏡下直腸切除術が実施された(発表記事)。8K遠隔手術支援システムはさらなる実証実験と医療経済的な観点からの分析が行われ、医療機器承認に向けた計画が策定される予定だ。

今回の実証実験で得た成果も踏まえて、現場の更なる操作性向上に向けた医療用8Kカメラシステムの機能開発を進めていくという。池上通信機は、8K映像の技術開発を通じ、これからも、社会に役立つ製品とシステムの開発に取り組んでいく構えだ。