日本国内のみならずグローバルで温暖化ガスのゼロエミッションが目指され、カーボンニュートラル社会実現の機運が高まっている。が、従来技術では、空調の制御が室内環境に影響を及ぼすまでの"時間遅れ"を考慮することが難しく、それを考慮するためには温湿度や人流等のデータを長期間計測し、分析する必要がある――実際のビルにおいて、消費エネルギーを抑えつつ、来館者やテナントにとって快適な環境を実現することは困難だったという。
NTT、JR東日本、NTTファシリティーズ、NTTデータは、NTTが開発した「空調最適制御シナリオ算出技術」を、JR新宿ミライナタワーのオフィスロビーへ適用した。結果、夏季にオフィスロビーの快適性を維持しつつ、消費エネルギー量を約50%削減できることが実証されたことを今月1日に発表した。
コンピューター流体力学と機械学習の組み合わせによって、短期間での計測による少量データからの快適性予測を実現している点と、深層強化学習を用いることにより、ビル内の広い共用空間で生じる上記"時間遅れ"も考慮したフィードフォワード制御を行う点が特長である。新技術は、来館者の数、外気温、空調運転状況、室内の温湿度を用いて、快適性指標PMV(値が±1の範囲内であれば75%の人が快適と感じる)を予測する。
さらに予測されたPMVを基に最適な空調運転設定を算出する、処理を1日分繰り返し実施しながら最適化する深層強化学習を用いて、対象日における最適な空調運転シナリオを導出するという。カーボンニュートラルの実現に大きく貢献する。今回の成果はNTT R&Dフォーラムに出展される。