地域医療連携・地域包括ケアにおいて医療情報の電子化が重要視されるだけでなく、院内においてもチーム医療・クリティカルパスなど、医療における大きな変革にIT化は不可欠なツールとなっている。日本では、2010年に診療録の外部保存が解禁(厚労省通知)されたことで民間事業者側のデータセンター等での診療情報の保管が認められ、クラウド型の電子カルテや医用画像システム(PACS)の市場も形成されて、普及が進んでいるという。
国内の医療情報システム市場を調査した、矢野経済研究所は19日、同市場のセグメント別動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。近年概ね前年度比1~2%増で推移していた同市場は、COVID-19により、20年3月頃よりシステムベンダーの営業機会の損失や、院内での導入検討会議や導入作業などの遅延といった事態が顕在化し始めた。その影響は徐々に緩やかになっているものの20年度を通じて完全に回復するにはいたらず――
同年度の市場規模は前年度比4.0%減の2,676億7,700万円と推計する。内訳をみると、全てのシステムで前年度比マイナスとなっていて、下落率の高いシステム分野では前年度比20%近くの減少となっている。がしかし、21年度は前年度比3.1%増、22年度は同2.0%増となり19年度の水準を越えると予測する。リプレイス中心の市場ではあるものの、近ごろは電子カルテ市場においてクラウド型が存在感を増している。
クラウド型電子カルテは初期費用を抑えて導入でき、比較的小規模な病院での電子化促進に寄与するだろうという。「2021年版 医療情報システム(EMR・EHR)市場の将来展望」の概要版は、税込み1,100円で入手できる。