日本国内の量子コンピュータ市場は約3,000億円規模

物理量の最小単位である量子は粒でもあり波でもある。その特徴である「量子もつれ」「重ね合わせ」を用いて演算をする「量子コンピュータ」は、組合せ最適化問題を解くアニーリング方式(イジングマシン)と、ノイマン型コンピュータの流れをくみ汎用性に優れたゲート方式とに大別される。

量子コンピュータの国内市場を調査した、矢野経済研究所は今月7日、その技術動向や産業にもたらす影響評価、2030年度までの将来展望を明らかにした。21年度の同市場規模は139億4,000万円――。化学・金融・EC・広告・物流・学術系の先進組織で、スパコンでは歯が立たない領域を対象として、積極的に組合せ最適化問題や探索工程の高速化などのテーマを中心に量子コンピュータを活用した実証実験が前年度より行われている。

その成果物として、今年は材料計算やシミュレーションなどの特化型アプリや、最適化や量子機械学習を含めた各種ソルバーが登場。各用途探索に向けた取り組みが行われ、実際に成果も出てきているという。国内市場は急拡大するとみられるが、その前提要件となるのは、①ハードウェア(量子ゲート型、イジングマシン)の進化や開発環境の整備、②ハードウェアの能力を引き出すアプリの創出、③ユースケースの発掘である。

量子ゲート型は24年度からNISQの本格的な活用が始まり、化学計算や機械学習を中心に実証実験が増えるだろう。25年度の同市場は550億円になると予測する。26年度以降は、金融分野でのダイナミックプライシングのほか、シミュレーション領域での活用が広がる。省エネの高度化への寄与等も期待される。

30年度には自動車・医療分野でその正式活用が始まり、革新的な治療法など社会的にインパクトの大きな取り組みが徐々に登場する。同市場は2,940億円に達するだろうという。詳細は同社の『2021 量子コンピュータ市場の現状と将来展望』で確認できる。