光ファイバケーブル網をセンサ化、インフラ保守や災害対策に活かす

各種産業や市民生活のデジタルトランスフォーメーション(DX)およびデジタル社会を根幹で支えるものは通信用光ファイバである。現在、光ファイバ振動分布測定技術は空間分解能(位置特定性能)が数mオーダであり、それよりも短波長の振動や振動状態の変化は正確に測定できない。

光ファイバケーブルを伝搬する振動の波長や振動状態が変化する区間長は1m程度になることがあるため、従来の測定技術においては、振動様相を正確に捉えることが困難であった。空間分解能を無理に改善すれば測定で得られる信号パワーが低くなる、その結果測定の感度が低下して、正確な振動波形を得られなかったという。

NTTは、通信用の既設光ファイバケーブルをセンサとして利活用し、周辺の環境情報を取得する環境モニタリングの実現に向け、OFDR(光周波数反射率計)にて光ファイバに加わる振動を極めて高精度に測定する技術を実証した。同技術を用いて世界で初めて架空光ファイバケーブルに加わる微小な振動が光ファイバの長手方向に伝搬する様子――振動伝搬パターンを捉え、それが電柱等の通信設備の周辺や前後で異なることを見出した。

上述の振動伝搬パターンの変化点は、振動分布波形上のどの地点に通信設備があるか特定するための指標となり得る。ゆえに各種光ファイバ測定技術で得られる様々なイベントの発生地点を、これまでの測定器からの光ファイバ長だけでなく、振動分布波形上の設備位置を起点として高精度に特定可能とすることが期待できる。

今回の技術の確立を進めることにより、IOWN時代において既設光ファイバケーブル網をセンサとして活用した環境モニタリングを実現する。さらにその情報を多様な産業分野で利用してもらい、様々な社会課題の解決に貢献することをめざすという。同社の成果は12月発行『IEEE Journal of Lightwave Technology』に掲載予定とのことだ。