化学×データ科学の手法を革新する、触媒の世界地図を描く

触媒は化学反応速度を高める。排気ガスの浄化~エネルギーの変換など幅広い分野で実用化されている。その開発では熟練研究者の経験や勘を用いて試行錯誤――だが、インフォマティクスの登場により、材料・触媒科学は大転換期を迎えている。

マテリアルズインフォマティクス・触媒インフォマティクスでは、各データのパターンから材料・触媒設計を行う。研究者の経験や勘をデータ科学で再現するのだが、ビッグデータから知識・設計をどのように抽出するかが大きな障壁となっている。特にML等では機械がどう学習したのかを説明できず、理論的解釈による設計が難しい。理論に基づいた触媒設計が求められていたという。

北海道大学 大学院理学研究院と、JAIST先端科学技術研究科 物質化学領域の共同研究グループは、触媒ビッグデータから触媒の知識を表現――メタン酸化カップリング反応を対象とし、独自開発したハイスループット実験装置で得られたメタン酸化カップリング反応の触媒ビッグデータに対して、オントロジーの概念を元にデータ内の知識と関係性をネットワーク化――した「触媒世界地図」を描写。

それにより元素組成・実験条件・C2収率等の関係性が明白となり、そこで得られた情報から触媒設計を達成した。結果、当該地図からKVEu-BaO(20%C2収率)、LiTiW-BaO(19%C2収率)、EuMgZr-BaO(19%C2収率)、MoKW-BaO(19%C2収率)など未報告の活性触媒を設計・実験実証することに成功した。

JSTCREST研究領域における「実験・計算・データ科学の統合によるメタン変換触媒の探索・発見と反応機構の解明・制御」の支援を受けた。上記手法は触媒・材料ビッグデータにも適用できるため、大規模な科学データからの材料・触媒設計の技術基盤になることが期待されるという。研究成果は、Chemical Science電子版に掲載された。