建設現場DX、スマートデバイスにて重機の操作技能を定量評価

日本の建設業界では、自然災害による土砂崩れなどの二次災害を避けて安全な場所から建設機械を操作する遠隔技術が導入されている。建設機械の周囲にカメラを設置し、VR(仮想現実)技術を用いて運転席から見た映像と機械の振動を同期させて遠隔操作する工法が特に注目されている。

しかし遠隔操作は作業環境における周囲の状況把握が難しい。それゆえ操作時の心理負担が大きく、操作者に配慮した操作システムを開発することが不可欠だという。熊谷組立命館大学東京工業大学東京工業高専らの研究グループは、スマートデバイスを用いて、建設機械の遠隔操作者の心理的負荷や操作技能を定量的に測定できる計測モデルを考案した。

実験では9名(18~50歳)に模擬現場で3種類のオペレーション――建設重機の操縦、モニター映像を用いた遠隔操作、モニター映像と機械振動を組み合わせたVR操作――を行ってもらい、各操作者の心拍変動(HRV)やマルチスケール・エントロピー(MSE)など42項目をスマートウェアで測定した。これらの指標は自律神経調節を定量的に示すものであり、業務においてのストレスを評価する有用な手段となる。

心拍と身体加速度とから心理的ストレスを評価した初めての事例となった。今回、VRによる重機遠隔操作はモニター映像による操作よりも心理的ストレスが高いことが示唆された。結果、操作ストレスを考慮し、身体振動を許容範囲内に抑えることで、適切な運転時間を算出する手法を新たに開発した。

従来未解明であった心理的負荷と身体振動の関係に着目し、建設機械の走行時間との相関を明らかにした。国土交通省建設技術開発助成事業(政策課題解決型)「無人化施工における生体情報を活用した生産性向上のための分析評価システム」(同省PDF資料)の下で実施した研究の成果は、今月16日、国際学術誌「JMIR mHealth and uHealth」に掲載された。