スマート農業、実証済み生育予測システムを強化し本格運用へ

実需者と直接契約して決まった日に所定量を確実に出荷する。契約出荷においては、生育予測により出荷日を予測し、生産ロスを最小限に抑えつつ約束した出荷量を確実に生産することが重要である。予測手法として、生産者の経験則に基づいた数値を登録する方式が採用されていた――

従来手法では、長い経験が求められ、年毎の気象条件の変動に左右されやすいといった問題があった。そこで葉齢の測定など、植物生理に基づいた方式も導入が検討されているが、この方式は導入前後に一定期間、専門家による調整(フィッティング作業)を要するため、導入の難易度が高いといった課題があったという。

日立ソリューションズ東日本は、トップリバーと共同で、農水省のスマート農業実証プロジェクト(実施主体:農研機構)において、「次世代農業人(スマートファーマ―)育成」実証を2年間実施。同プロジェクトの取り組みのひとつである「AIを活用したレタスの生育予測システム」について、令和3年度より、トップリバーの御代田農場、富士見農場において本格運用を開始した。

同システムは、過去2年間の気象メッシュ情報(約1キロ平米のデータ)と生育日数データを利用し、気象変化vs.日数変化、生育に影響を与えるパラメータをディープラーニング(深層学習)させることにより、時期毎の生育日数を自動算出する。専門知識不要で短期間導入可。定植日と生育予測による収穫予定日がガントチャートで一覧できるため、出荷量の見通しが一目で、かつ将来の過不足の情報が把握可能となった。

経験則に基づく生産者の予測値は±3.1日。一方、同システムにおける21年4月~6月の予測精度は、±1.9日(収穫予測日と実収穫日の差)を実現した。チューニングなしに高い精度が得られた。「AIを活用した生育予測システム」はレタスを始めとする葉物野菜での適用を開始、さらに多品目、多品種への拡大を予定しているとのことだ。