磁気粒子イメージング装置の実現に向けて、新たな画像診断技術を開発

現在、臨床現場で広く実用されている。磁気共鳴画像診断(MRI)やX線コンピュータ断層撮影(X線CT)は、画像の濃淡で組織や腫瘍等を判別する。他方、2005年に提案された新しい画像診断手法、「磁気粒子イメージング」は、陽電子放出断層撮影(PET)などと同様にトレーサーのみ――

PETでの放射性同位元素のように、組織や腫瘍を観察するために用いる検出対象物質のみを検出し、画像化することが特徴である。磁気粒子イメージングは、今日欧米メーカー製の小動物(動物実験)用装置が市販されているものの、いまだ人体に適応する臨床装置の実現には至っていないという。横浜国立大学TDKは、高感度磁気センサを活用した画像診断技術を開発したことを今月6日に発表した。

同技術は、腫瘍や血管に集積させた磁気粒子すなわちトレーサーを検出する。磁気粒子イメージング手法に係わるものである。今後、両者は、臨床実用される磁気粒子イメージング装置の実現を目指し、さらなる開発を進めていくという。

磁気粒子イメージングは腫瘍や血管に集積させた磁気粒子――磁性ナノ粒子、10nm程度の酸化鉄(Fe3O4、 γ-Fe2O3) が代表的で生体適合性からMRI造影剤として実用されている――が発する磁化信号を体外から検出することを原理とする。そのために微量の磁気粒子を高感度で検出することが重要である。検出コイルに電磁誘導される起電力を測定する手法が主流だが、横浜国立大学はこのたび、高感度磁気センサを活用した。

TDKが開発した高感度磁気センサ(Nivio xMRセンサを使用)は、常温で微弱な磁界を検出する。すでに心磁界検出などの実績があり、今回の開発では体外から印加する交流磁界の強度を従来の1/10以下に低減した。高感度磁気センサを活用することにより、人体の頭部や全身まで、診断範囲を広げた磁気粒子の検出が可能になるだろうという。