乗客の利便性と保安検査の確実性を両立させるためには、検査能力・効率性向上が求められる。危険物の見逃しが許されない保安検査員にかかるストレスは極めて高く、その軽減が課題となっていた。労働人口の減少が続くこの国の、手荷物検査において、熟練検査員による検知のノウハウの継承は重要であるものの、人財育成は容易ではなく、経験の浅い検査員は検知に時間を要するといった課題もあったという。
南紀白浜エアポートと日立は8月27日、南紀白浜空港において、保安検査を支援する人工知能(AI)技術の実用化に向けた実証実験の実施に関する覚書を締結した。同日より来年3月末日まで、AIの活用による空港の保安検査におけるさらなる業務の高度化・効率化に取り組むことを発表した。
今回、AIを活用して手荷物検査の高度化・効率化を支援する実証を行う。従来の検査員による「目視」に加え、AIによる二重の確認により、保安検査員のストレス軽減とともに手荷物検査の安全性の更なる向上をめざす。システムの中核には、日立ソリューションズの「X線検査判定支援ソフトウェア」を用い、X線装置の手荷物検査にてAIによる危険物の自動判定を行う。
同ソフトウェアは17年11月に日立がその開発を発表した「AIの活用により、X線手荷物検査において安全性を自動識別する技術」を活用――。上記AIは、日々更新される新たな危険物の情報や熟練検査員のノウハウを学習して進化し、高いセキュリティレベルと業務効率の向上が図られる。このたびの実証では、AIを実際の手荷物検査に導入することによる運用性および導入効果を検証するという。