性能を落とさず演算量を変えられる、スケーラブルAI誕生

音声認識、機械翻訳、自動運転向けの画像認識まで、AIは近ごろ様々な用途で活用されている。同じ機能を持つものでも活用するシステムやサービスは多岐に渡っている。たとえばカメラ画像から人物検出するAIは、スマホや監視カメラに加え、無人搬送車(AGV)等で使用されている。

利用するシステムごとにプロセッサの能力が異なり、AGVのように衝突回避で高精度な位置把握を要するものもある。現状、人手で演算量と必要な精度とのバランスを試行錯誤しながら、システムごとにAIをいちから開発、学習――。開発期間やコストがかかるうえ、利用するシステムごとに異なるAIが開発され、管理が煩雑化するため、スケールメリットを出すことが困難である。

利用するシステムの演算能力に応じて単一のAIを展開するスケーラブルAIの開発が始まっているものの、元のAIから演算量を落とすとAIの性能も落ちるといった課題があったという。東芝理研は今月20日、学習済みAIの性能を維持しながらも演算量が異なる様々なシステムに展開することを可能にする学習方法、スケーラブルAI技術を開発したことを発表した。

新技術を画像中の被写体分類に用いたところ、演算量を1/3に削減した場合でも、分類精度の低下を従来のスケーラブルAIの3.9%から2.1%に抑えられ、世界トップレベルの分類性能を達成した。これにより、大規模で高性能な人物検出AIを一度学習すれば、スマホや監視カメラ、AGVといった適用環境ごとの試行錯誤が不要になり、AIエンジンを共通化することが可能となり、その開発に必要なリードタイムの削減や管理の効率化が期待できる。

さらに、大規模なAIを学習するときに、演算量と性能の関係が明らかになり、適用するプロセッサ等の選択が容易になるという。理研AIP-東芝連携センターにおける成果である、今回の技術は国際会議IJCAI2021にて詳説される。