金融機関による信用評価へ、気候変動等のリスクを反映する

COVID-19のパンデミックが宣言されてから1年余り、今年4月の米政府主催"気候リーダーズサミット"において、日本政府は温暖化ガス排出量の13年度比46%減を表明した。世界中で、新たな感染症の出現や気候変動が脅威となっている。

近年、金融機関は、新しいタイプのリスクに対して自社の貸出先への影響を評価し、その結果を内外に開示したうえで、それらのリスクの低減等に取り組むことが求められている。その中でも、気候変動に伴う水災の頻発、疫病の発生などのリスクは、発生頻度も少ないことから過去の評価との比較や、将来生じた時の影響の評価が困難なものになっているという。

デロイトトーマツグループトーマツと、SASは協業し、金融機関が気候変動やパンデミック等の新しいリスクに対して、ポートフォリオを構成する貸出先の財務諸表のモデリングを通じた信用評価を行うためのツールを開発し、その導入に向けたサービスを開始することを今月13日に発表した。

「リスク事象が貸出先財務や担保価値に与える影響のモデルロジック」「貸出先属性(業種等)に応じたB/S、P/L構造」「ポートフォリオの期待信用損失計測機能」「地理情報を組み合わせたグラフを含む結果のビジュアライゼーション(ドリルダウンによる対話型分析機能)」を搭載する。同ツールによりユーザーは、ポートフォリオデータを入力するだけで、個々の貸出先のシミュレーション結果を取得――

ポートフォリオのリスク影響を動的にドリルダウンして分析できるレポートが利用可能になるという。両社は、当該ツールの導入にあたり、個々の金融機関とのコミュニケーション等を通じて、カスタマイズや機能拡張を行っていくとともにツールのバージョンアップを行っていく。今後も、金融機関向けサービス提供に係るナレッジを融合させていくことで、金融機関の信用リスク評価支援の高度化に関する助言サービスを拡大するという。