生物資源由来の原料でゴムを合成、自動車用タイヤを量産する

材料開発の分野では、コンピュータや人工知能(AI)の進歩により、"経験と勘"に基づく従来手法に代わる、良質なデータからインフォマティクス(情報科学)を用いて高速で材料開発を行うマテリアルズ・インフォマティクスが大きな潮流になっているという。

NEDOは「超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト(超超PJ)」で計算・プロセス・計測の三位一体による有機・高分子系機能性材料の高速開発に取り組んでいて、その一環として、産総研ADMAT横浜ゴムと共同で、バイオエタノールからブタジエン(C4H6)を高速かつ効率的に合成する技術開発を進めている。19年には大量データを取得・解析するハイスループットシステムとデータ駆動型学習、触媒インフォマティクスの活用により――

当時最高峰の触媒システムを開発し、生成したブタジエンからブタジエンゴムを合成した(発表記事)。知見を生かし、20年には19年比1.5倍のブタジエン収率を持つ触媒システムの開発に成功した。4者は今回、バイオエタノール処理量を約500倍にした大型触媒反応装置を設計・製作してバイオエタノールからのブタジエン大量合成を検討、反応条件の最適化やブタジエンの捕集方法改良により、約20kgのブタジエンの製造を達成した。

さらに、そのブタジエンを蒸留精製により高純度化した後、重合反応によって得られたブタジエンゴムを原料とした自動車用タイヤの試作に成功した。ブタジエンは現在、合成ゴムなどの重要な化学原料として石油から生産されているが、バイオマス(生物資源)から生成したブタジエンからタイヤを生産する技術を確立することにより、石油への依存を低減し、CO2削減と持続可能な原料調達が促進される。

試作タイヤはグランドツーリングタイヤ「BluEarth-GT AE51」の185/60R15であり、石油由来のゴムを使用した時と同等の材料性能を有しているという。