地球温暖化が洪水を招いていることをデータで証明

温室効果ガス濃度の上昇による、様々な自然災害リスクの増加が予測されている。近年、気候科学研究の進歩により、将来のリスク変化を示すだけでなく、「現在すでに災害リスクが変化しているか」「近年の災害にすでに地球温暖化の影響が現れているか」の解析が可能になりつつある。

それらは気候変動の検出と原因特定(Detection and Attribution)研究と呼ばれ、主に熱波・旱魃・豪雨などに対する影響が議論されてきた。が、河川洪水については、気象災害よりも空間スケールが小さくかつ複雑なメカニズムで引き起こされるため、そこで扱うことは難しいとされてきたという。

芝浦工業大学および東京大学生産技術研究所の研究グループは、MS&ADインターリスク総研と共同で「グローバルな洪水リスク情報の効果的な活用方法に関する研究」に取り組み、気候変動により変わりつつある洪水リスクを解析――過去35年間の世界の洪水頻度の変化を衛星画像から検出し、近年の洪水に対する地球温暖化の影響を気候モデルにて解析した。

観測とモデルの両面から、一部地域では地球温暖化の影響が河川洪水にすでに現れ始めていることを示した(情報公開:LaRC-Floodプロジェクト )。サイエンティフィックリポーツに掲載された同研究の知見は、企業や行政による洪水をはじめとした気候変動リスクの適切な分析を後押しすることで、温暖化被害の(事前対策による)削減に貢献することが期待される。

研究グループは、これまでのLaRC-Floodプロジェクトを発展させる形で、今月1日からNEDO「官民による若手研究者発掘支援事業」の下、テーマ名「気候モデル出力と地理情報ビッグデータを活用した広域洪水リスク情報創出」において、より高度な洪水リスク研究に取り組み、産業界での活用までを視野に入れた高精度の広域洪水リスク情報の創出とその実用化に向けた研究を加速するという。