異常の根本原因探索やメカニズム解明をAIがサポート

多彩な分野、様々な場面で多くの時系列データが収集され、AIによる状況判断や異常検知が行われている。近年、AIには判定根拠の説明が求められている。

時系列データの場合はしかし、AIの判定要因が多種多様に存在する。そのため、専門家であってもどのようなデータの変化が異常判定に影響したのかに気づきにくく、異常な状態への適切な対応や防止策につなげることが難しいという。富士通と仏国立研究機関Inriaは、時系列データで異常な状態と判定した要因を特定するAI技術を開発した。

時系列データ解析技術を用いて、異常と判定されたデータから同判定の要因となった特徴と、そうでない特徴を平面上にマッピング。②その平面上で、要因となった特徴の点データを、非要因特徴の点データ群に近づける変換を行う。③変換後の点データ群の特性に基づいて、時系列データを復元し、正常と判定されるデータを生成。これにより、正常・異常データの形状を比較でき、ユーザーは異常の原因究明を視覚的に行える。

外部研究機関の協力を得て、脳波の実データを活用したせん妄検出に同AI技術を適用。時系列データの波形の特徴と、せん妄状態に現れるSlowing現象との一致が確認できた。結果から、時系列データの読影を通じて病気の原因を推定する際の参考にすること、困難だった病気の予兆判断や予防的な治療法の発見、未解明病態のメカニズム解明への応用など、医学的発展につながることが期待される。

機械学習分野で最も権威ある国際会議「ICML2021」にて、採択率3%のLong Talk論文として発表される。今回の技術について、両者は、企業の業務現場や研究機関の実験などでの活用を促し、技術検証していく。富士通は同技術の改良を重ね、21年度中にAI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」の一つとして実用化し、幅広い分野への展開も目指すという。